目に見えない線が世の中にはたくさんある

スパイ映画によく出てくる赤外線センサトラップのことではない。因みに、よく出てくるとは書いたが、実際はバラエティ番組以外では見たことがない。

梅雨前線や寒冷前線が代表例としてある。前線とは、2つの気団が接触したときに生ずる不連続面が地上と交わる線のことを指す気象用語であるが、実地にいたとしても視覚や触覚で感知できる類のものでは無い。そもそも、詳しいことは分からないが、気団もどれほど感知出来るか不明だ。ただの自然現象を人間が観察し、定義して分類した結果、出現してきたラインである。

国境も目に見えない。現在の主権国家が誕生する以前から存在したが、その時はラインとしてどこまで明瞭に引かれていたか不明だ。しかし、前線と同じく、実際に明確か否かはさておき確実に人々の意識の中に存在したことは間違いない。領海という概念が成立する以前は、日本人は日本国の領域をどのように捉えていたか、気になるところだ。

体の内側外側は線引きがコロコロ変わる。例えば、口の中は体の中だろうか、外だろうか。口に入れてからの時間や処理、状態に左右されそうだ。服を着た時の肌とTシャツの間の空間は内側と言えないだろうか?脳の演算/記憶機能を補完している自宅のPCとそのICは必ずしも体の外側と言えるだろうか?

線引きは人間の意識によってなされるが、少なくとも私の意識は明確な線を引くには心許ない揺れ方をしている。